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福岡高等裁判所 昭和29年(ネ)288号 判決 1955年6月01日

控訴人(原告) 片岡米人

被控訴人(被告) 国

訴訟代理人 川本権祐 外一名

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は、控訴人の負担とする。

事実

控訴代理人は「原判決を取消す。内務大臣山本達雄が昭和八年六月九日為した控訴人の国籍回復を許可する旨の処分が無効であることを確認する。訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴指定代理人は主文第一項と同旨の判決を求めた。

当事者双方の事実上の陳述、証拠の提出援用認否は控訴代理人に於て、甲第七号証の一、二を提出し、当審証人片岡静子、中野武次郎、中山文夫、片岡定吉の各証言及び控訴本人尋問の結果を援用し、乙第四号証の成立を認め、被控訴指定代理人に於て、乙第四号証を提出し、甲第七号証の一、二は不知と述べたほか、原判決事実摘示と同一であるから、これを引用する。

理由

当裁判所は更に審究した結果、左の点を附加するほか原判決理由に記載してあるところと同一の理由によつて、控訴人の本訴請求は認容すべきでないと判断するので、該理由をこゝに引用する。

控訴人提出の甲第七号証の一、二によれば、昭和九年(一九三四年)八月二十四日頃当時のアメリカ合衆国長崎領事宛アメリカ市民としての登録方を申請していたことは認められるけれども、斯様な事実があるからといつて、昭和八年四月四日付控訴人名義を以て為された乙第一号証の国籍回復許可願が控訴人の意思に基づかないものであつたと断定する資料とはならない。その他控訴人が当審において援用する各証言及び控訴本人の陳述も右の点に関して十分の心証を惹くに足らず、原判決の認定を覆すに由ないものである。

そこで、控訴人の本訴請求は認容すべきでないとしてこれを棄却した原判決は相当で、本件控訴は理由がないので、民事訴訟法第三八四条第八九条第九五条を適用して、主文のように判決する。

(裁判官 森静雄 高次三吉 厚地政信)

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